窯元・作家さんのこと

青郊窯 | 伝統から普段使いできる九谷焼へ


伝統的な九谷焼を日常使いできる九谷焼へ。
青郊窯の色絵の美

九谷焼はなんだか高級で普段使いしづらそう…なんてイメージはありませんか? そんなイメージを払拭しているのが上絵付けの名窯・青郊(せいこう)です。青郊のアイテムは、お手頃価格。だから食卓で気軽に使えて楽しめます。それでいてクオリティは高い。九谷焼ならではの鮮やかな色彩や発色が楽しめます。
なぜ質の良いものを求めやすい価格で買えるのか?
青郊の実際のアイテムとともに探ってみましょう。

 

 

古九谷を日常使いできる
喜びと幸せ

『31日の九谷豆皿名品コレクション』

九谷豆皿名品コレクションは、古九谷や、再興九谷の筆頭・吉田屋窯の絵柄を豆皿に再現したシリーズで、青郊を代表する人気のアイテムです。古九谷や吉田屋窯の絵柄を商品化した理由を代表の北野啓太さんに聞きました。
「デザイン(絵)に力があるからです。その良さは歴史が証明しています。古九谷なら300年以上前、吉田屋窯なら200年程前に描かれたものが、当時から今に至るまでずっと人気。それって、どの時代でも通用しているということです」


向かって左から、『古九谷青手鶴かるた文』『古九谷色絵鳳凰文』『古九谷色絵牡丹文』。

豆皿に描かれている古九谷の実物を、いくつか美術館でガラス越しに見たことがあります。実物は、直径30センチほどの大皿でした。美術的価値からしても使うなんてもっての外だし、サイズ的にも、大皿は今のライフスタイルだと使いづらい。しかし青郊のアイテムなら、豆皿で楽しめてしまう。古九谷や吉田屋窯好きには嬉しい限りです。

豆皿なので手のひらサイズ。

豆皿の他に、さらに小さい姫皿も。小さくても古九谷や吉田屋窯の絵柄は印象的。

 

お手頃価格なのに
高クオリティ

価格にも注目です。すでに紹介した古九谷の豆皿は、1枚1,210円(税込)。手軽に買える価格設定がうれしい。価格に対して代表の北野さん
「蔵にしまって、たまに眺めて楽しむ九谷焼も素晴らしいけど、青郊の器は、日々の暮らしの中にあるもの。手に取りやすい価格じゃないと、気を使って日常使いしづらいでしょう」


『まめ富士』富士山のカタチの豆皿です。可愛くて使い勝手も良い。

一方で、クオリティも疎かにしない。なぜなら
「購入したことを後悔してほしくない」からなのだそう。では九谷焼のクオリティとは何か? その1つが、絵の発色や透明感を左右する和絵具です。九谷焼の色は、和絵具で表現されてきました。

 

100年に渡る和絵具の研究

約100年の歴史がある青郊。その歴史の分だけ、そして今現在も行われているのが和絵具の研究・開発です。青郊を起こした初代の頃は、和絵具は一部の作家が使うもので、食器のような一般流通商品には使われなかった時代。それならと初代は本を片手に和絵具作りを始めたのだそう。


より美しい色を目指して今も和絵具の開発・研究は続けられています。

「初代も、二代目も、自分も、1点ものや高尚なものを作ろうとはしなかった。いかに『クオリティの良いものたくさん作って市場に流通させることができるか』という考えで取り組んできたし、今も取り組んでいます」北野さん。
一般流通の商品を作るためにも、九谷焼としてのクオリティを保つためにも、その特徴に直結する和絵具を独自に研究することは必須項目だったのです。

 

食器として安心して使える
和絵具の開発に成功


青郊の色絵豆皿を使用。

九谷焼で使われてきた和絵具には鉛が含まれています。しかし、現在、食品衛生法により有鉛の和絵具を食器に使うことは難しくなっています。青郊は長年培った和絵具の研究により、いち早く無鉛和絵具の開発に成功。しかも有鉛に比べると劣ると言われていた発色や透明感も、申し分ない美しさで焼き上がる無鉛和絵具を開発したのです。無鉛だから仕方ないと妥協しなかった姿勢のおかげで、九谷焼の美しさは損なわず、それでいて安心して食卓に並べられる九谷焼の食器作りを可能にしました。

『5柄から選べる色絵豆皿』。食品衛生法の基準をクリアしているので安心して食卓で使うことができます。

 

高い転写・印刷技術だから叶う
お手頃価格

ではなぜ、うれしい価格が叶うのか? それは、転写・印刷技術によって高品質なものを大量生産できているからです。

独自開発した和絵具をインクにして、絵柄を転写紙に印刷。その転写紙に印刷された絵を器に貼り付け、焼成することで器が完成します。手描きに比べて、大幅に時間もコストも抑えることができたそう。

 

手描きを超える
手描きっぽさの追求

呉須線(ごすせん)と呼ばれる黒色の輪郭線。葉脈なども呉須線で描かれています。この呉須線は、手描きしたものをパソコンに取り込み、そこに色を配置してデザインが完成するという流れ。呉須線の太さや強弱によって、印象が大きく異なってくるため、納得する線が表現できるまで、何度も何度も描き直すそう。


そばちょこサイズの『猪口 名品コレクション 古九谷色絵亀甲牡丹蝶文』細かく描き込まれた呉須線に注目。


『姫皿 吉祥コレクション めでた器』。こちらは太めの呉須線で、縁起の良いモチーフが描かれています。

また、色においても手描きの風合いが出るよう工夫している。同じ葉っぱの色もあえて濃淡がつくようにしているのだとか。
「職人が筆で色を塗っていくときの加減は一定でなく、どうしても濃くなったり薄くなったりとムラができる。それが味わいや風合いとなって魅力になる。それを印刷でも再現しています」北野さん。


『5号名品コレクション 古九谷色絵牡丹文』。線の強弱、色の濃淡に注目を。

 

二次元でデザインしたものを
三次元の器に貼り付ける難しさ

転写のデザインは難しく、「毎回、頭を悩ませている」北野さん。なぜならデザインの段階では平面ですが、貼り付ける器は立体だから。教科書にあった展開図をイメージしてみましょう。立方体や三角すいの展開図のように、器も平面に展開して、そこに絵をデザインしていくそうです。が、器は立方体や三角すいよりも、複雑な形でカーブもあります。単純でない分、器の展開図を作るだけでもひと苦労なのだとか。


印刷風景。扇状の展開図は、「縁起ちょこコレクション 風神雷神図」。

展開図の始まりと終わりも重要。おちょこなど、ぐるりと転写紙を貼り付けた際、転写紙の始まりと終わりは重なります。その重なり部分が目立たないよう、絵の配置を工夫しているそうです。

『縁起ちょこコレクション 風神雷神図』。同じおちょこ5個を少しずつ回転して置いてみました。

青郊ではお馴染みの絵柄、例えば石畳でも、器のカタチや大きさによって展開図は異なるので、器ごとに転写紙のデザインは起こしているのだそう。


4点とも青郊ではお馴染みの絵柄ですが『デミカップ&ソーサー』では、絵柄のパーツは小さく細かくなっているそう。

 

転写紙を貼る職人の技術が
完成の出来を左右する

『10.7号盛皿 波』。大皿の迫力の絵が美しいのも、転写紙を貼る技があってこそ。

器に転写紙を貼るのには、高い技術が必要です。シールのようにペタっと貼って、はい完成というわけにはいきません。程よい力加減で、器と転写紙の間の空気を抜きながら貼り付けいくのですが、転写紙はとても繊細。力加減を間違えると転写紙がちぎれてしまったり、上手く空気が抜けないとシワができてしまったりしてしまいます。


ヘラを巧みに使って絵を傷つけず、絵がよれないように、でもしっかりと貼り付ける。絶妙な力加減が必要。

器の形に沿って貼り付けないと、皿として見た時に中心がずれていたり、コップ状のものは転写紙の始まりと終わりの重なる部分がずれて絵が崩れてしまったり。転写紙をキレイに貼り付けるのは、高い技術が求められるのです。

 

『色絵飯碗 宝尽くし』と『色絵飯碗 吉田屋風葵』。飯碗の曲面に繊細な転写紙を貼り付けるのも難しい。

「手描きの上絵職人と同じぐらい、転写紙を貼る技術を持つ職人を育てることは難しい」北野さん。
青郊では、40人ほどの転写紙を貼る職人が生産に関わっていて、中には30年以上の経験を持つ達人も。
器の形状によっては、そんなベテランの職人にしか頼めないものもあり、もっとも難しいのがロックグラスだという。内側にキレイに貼り付けるのは至難の技なのだそう。


『ロックグラス 粋』。手を入れるだけでもやっとの広さしかないグラスの内側。どうやってキレイに貼っているのだろう?

 

技術の挑戦。器以外の九谷焼

青郊のラインナップには、皿や飯碗、猪口といった器だけでなく、名刺入れやボールペンなどもあります。


「インパクトがあるでしょう?北野さん。
「これらのアイテムは、技術のチャレンジです。そもそも九谷焼は絵という加飾が魅力。キャンパスは陶磁器だけじゃないと思っていたところに、たまたまニューセラミックスという素材と出会えた。そして自分たちが開発した和絵具なら、ニューセラミックスに絵付けが可能だとわかり、これらのアイテムを世に出すことができました」

日常の器はもちろん、ステーショナリーにまで九谷焼が進出! 暮らしに寄り添う九谷焼が青郊なら楽しめます。

 

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