九谷焼のこと

九谷焼ができるまで | 九谷焼の製作工程


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九谷焼MAG どい

石川県の編集・出版社に15年勤務を経て、九谷焼技術研修所へ。その後、九谷焼MAGで、日々九谷焼の情報を発信しています。

石川県の伝統工芸品・九谷焼。
歴史的にも、美術的にも
世界に誇れる優れた焼き物です。
そんな九谷焼。
どのような工程を経て完成するかを、ご紹介していきます。

採石

石川県小松市で採れる花坂陶石を原料に九谷焼は作られています。
この花坂陶石は、なんと江戸時代後期に発見されたもの。
それが今でも採石は続けられていて、
江戸時代からずっと九谷焼を支えてくれています。

 

陶石を粘土に

陶石を粉砕し、さまざまな工程を経て、粘土が作られます。
花坂陶石の特徴としては、鉄分が多いため
焼き上がった素地は、グレイがかった味わい深い白に仕上がります。
また、粘りが強く、ロクロひきしやすい粘土と言えます。
最近では粘土屋さんの開発努力により、鋳込み成形により適した粘土も作られています。

 

③ 成形

粘土を器や置物の形にしていく工程です。成形方法はさまざまあります。
・写真はロクロ成形。粘土の塊を回転させながら器の形にしていく成形方法。酒器や食器、つぼなどさまざまなものを成形。
・石膏の型にドロドロにした粘土を流し込んで形にする鋳込み成形。置物や器、どちらの成形にも用いられる。量産が可能。
・昔ながらの置物の素地の成形方法は、手起こし。パーツごとに型を作り、手で粘土をつめ、型から起こし、全てを組み合わせて一つの形にする方法。手間暇がかかるため、置物の成形は鋳込みが主流に。
手びねりは、粘土を紐状にして、それを積み上げ、接着させて形を作る方法。
たたら成形は、粘土を均一な厚みの板状にして、角形だったり、組み合わせて成形したりする。

 

④ 素焼き

成形した器や置物を焼成します。
昔は登り窯に薪を焚いて焼き上げていたが、最近はガスや電気の窯が主流に。
↓は、九谷焼の窯元「宮吉製陶」の窯。

800度前後で焼きあげます。
焼成時間は、6〜7時間。
窯から取り出された素焼きの器。ほんのり赤茶色に。

 

⑤ 施釉

施釉(せゆう)とは、釉薬を素焼きの器にかける工程です。
釉薬(ゆうやく)とは、高温で焼くとガラス質に変化し、器を覆う膜となる液体です。
この釉薬を素焼きした器にかけます。
さっとくぐらせながら、均等に釉薬がかかるよう素早く作業をしている。職人の技。

 

⑥ 本窯焼き

素焼き同様、本窯焼きも以前は登り窯で炊かれましたが、最近はガス窯や電気窯が主流です。
↓も「宮吉製陶」の窯。施釉をした器がびっしり。

素焼きよりも高い温度、約1300度で焼き上げます。
焼成時間は約12〜15時間。

本焼きを終えると、素地は白くなり、釉薬は透明になってツヤが出ます。

 

⑦ 上絵付け

本窯焼きされた白磁の器にまずは呉須で、輪郭や文様の線を描いていきます。
呉須は、コバルト、マンガン、鉄などを含む顔料です。
↓は呉須と赤の和絵具が施されています。

本来の九谷焼は呉須の黒+九谷五彩(緑、黄、紫、紺青、赤)の色彩で彩られます。
すでに呉須と赤は描かれているので、
残りの4色の和絵具を呉須の上に乗せていきます。
赤には乗せないようにします。乗せてしまうと焼成した時に消えてしまうからです。

和絵具を乗せると一旦、呉須線は見えなくなりますが、消えてはいません。

 

⑧ 上絵窯焼き・完成

800〜900度で焼くと絵具が器に定着します。

淡い色の和絵具が焼成することで、色も変化し、鮮やかな色彩に。
4色の和絵具はガラス質に変化しているので透明感があり、
下に描かれている呉須も透けて見え、繊細な文様が浮かびます。
この透明感が九谷焼の特徴の1つでもあります。

 

 

粘土の製造では、粘土屋さんが
成形や素焼き、本焼きでは、素地作りの職人さんが
絵付けでは絵付け職人さんが
各工程を丁寧にプロの技でやり遂げています。
また、窯での焼成も経験から温度管理が行われます。
釉薬や絵具、筆などの道具類なども欠かせません。

どれひとつとして欠けることなく、滞りなく工程がすすむことで
九谷焼という焼き物は作られているのです。