九谷焼のこと

九谷焼を仕事に。九谷焼技術研修所


では九谷焼を仕事にしたい人、必見!
石川県立九谷焼技術研修所

九谷焼技術研修所では、絵付けと成形(ロクロなど)の両方を学ぶことができ、また九谷焼のほぼ全ての技法を一通り修得することができるそう。卒業後、プロとして九谷焼の世界で活躍できるためのカリキュラムになっていて、実際に卒業生の多くが九谷焼の業界で活躍しています。

 

卒業制作からわかる
育まれた技術力とオリジナリティ

本科卒業生が卒業課題として制作した作品をいくつか見てみましょう。


「トキメキクタニタイム」
_作者のコメント_
時計は私たちの生活に欠かせない道具です。お気に入りの時計を見つけて一緒に暮らしてみませんか?


「立ち昇る愉気(ゆげ)」
_作者のコメント_
立ち昇る湯気には幸福を感じます。愉しく食事する人の雰囲気と表情を、湯気と花に例えて加飾しました。

 


「Snap Shot NO.2」
_作者のコメント_
この陶箱は、私の好きな場所や風景を表現しています。その場所にいる時の自分の感情を込めて制作しました。

 

「ロクロをひいたことがない」「上絵を描いたことがない」。入学時はそんな研修生が多数を占める中、2年間の本科のカリキュラムで、卒業制作の作品からもわかるように、テーマ性が高く、かつ独創的な素晴らしい九谷焼が作れるようになるのです。

卒業作品をもっと見たい方は、研修所HPへ

 

研修所で学べること

では、実際にどんなことが学べるのか?
陶磁器の全般的知識と技能を修得する学科・本科(2年制)のカリキュラムを見てみましょう。

本科1年では、九谷焼を作る上で必要な基本を学び、それを身につけるための実習が行われます。
授業内容や課題を一部、紹介していきます。

「上絵基礎」

初期の段階で行われる実習では、呉須という顔料で線をまっすぐ、等間隔に描き、その上に和絵具を塗る課題が与えられる。筆や絵具の扱い方を学ぶ。

 

デザイン実習の「模写」


鳥の図鑑を模写する様子。絵を描く上での基本となる写生や模写により、正しく描写する力が身につく。美術系の経験がなくても、美大の先生方が講師を務めてくれるデザイン実習を通して、九谷焼作成においても必要不可欠な美術的な基礎が学べる。

 

成形実習の「ロクロ成形」


ロクロ経験がなくても、日々の積み重ねと指導により、ひけるようになる。

 


電動ロクロは全部で30台ほどあり、授業では、一人ひとりそれぞれに専用のロクロが与えられる。

 

最初に作るのは煎茶碗。

煎茶碗がひけるようになると、飯碗、5寸皿と成形の技を修得する。ロクロの他に、「タタラ成形」や「手びねり成形」といった基本の成形も学ぶ。

 

古九谷写し

古九谷の大皿の絵柄を、無地の大皿に写し絵付けを施す実習。

 

古九谷を写した大皿は、研修所内の錦窯で昔ながらの薪を使って焼成される。研修所内には、この錦窯(上絵用薪窯)の他に、ガス窯が2基、電気窯が3基、上絵用電気窯4基(うち2基は無鉛用窯)を完備。研修生の日々作られる課題の作品や試作品が焼成されている。

 

九谷焼の絵付け技法

本科1年から、九谷焼の絵付けの技法を本格的に学ぶ。

例えば、赤の絵具で極細の線を連ねて文様を描く「赤絵細描」。



他にも、青色の小さな点を等間隔に置いて表現する「青粒」技法。

 

また、赤で塗った器に、金彩のみで表現する技法「赤地金彩」。他にも、さまざまな技法を学ぶ。

 

本科2年では、より高度な実習や制作が行われます。本科1年の時に学んだ基礎も重要となってきます。

庄三写し


庄三(九谷庄三)とは、明治期の九谷焼ブームを牽引した人物で、素晴らしい陶工。九谷焼のあらゆる加飾技法を取り入れている庄三の作品を写すことは、本科1年で学んだ上絵の基本や技法を全て駆使して課題を仕上げることになる。

 

写生から図


写生をもとに図案を考え、器に絵付けを施す。器は自分でロクロでひいたものを使用。

 

成形実習の「ロクロ成形


ロクロは難易度が上がり、マグカップ、小丼、壺、そして最後に八寸の大皿に挑む。↑は、八寸皿をロクロで成形している様子。八寸皿は、直径が約24cmの大皿。大きい分、難易度が高い。

 

石膏制作の「寄せ型技法による置物作り


より複雑な形状の置物を作るための技法「寄せ型技法」で制作。本科1年から身につけてきた写生や模刻の技術も試される実習。

 

造形と模様の実習

自分でコンセプトを設定し、作品を制作。写真は完成した作品を見せながらコンセプトを説明している様子。商品価値のある作品作りへの取り組み方も学ぶ実習だ。

 

卒業制作

本科の卒業制作では、課題作品と自由作品を作る。これまでに学んだ知識や技術、コンセプトの建て方など、全てを注いで制作。卒業制作が出揃うと、講師を招いて講評会も行われ、また3月末には、研修所内の展示ホールで「卒業・修了制作展」も開催され、一般の方も作品を見ることができる。

ここまで紹介してきた「本科」の他に、研修所では、より高度な知識と技術を修得するための学科「研究科(1年制)」と九谷焼産業従事者がさらに知識や技術を身につけるための「実習科 加飾専攻・造形専攻(各1年制・週1回金曜日)」があります。

 

講師陣も魅力的

現役の陶芸家の技術を間近で!

一方、絵付けや成形の実習では、実際に九谷焼の世界の第一線で活躍する陶芸家の先生方が直接、指導してくれます。例えば、九谷焼でも昔から用いられてきた技法・染付は宮内庁御用達窯の山本長左氏。色絵九谷の巨匠とも称される山田義明氏は、「写生から図」を担当。本来なら各先生方の工房でしか見ることができない技が、授業では間近で見ることができ、その技をイチから指導してもらえます。

 


山本長左氏の染付の作品。藍色一色でありながら、美しく豊かに表現された絵付けは見る者を魅了。藍古九谷を現代に再現する絵付け師との呼び声が高い。

 


そんな山本長左氏が、染付の授業を担当。長年培った匠の技を伝授してくれる。

 


色絵九谷の巨匠・山田義明氏の作品。まるで自然のワンシーンを切り取ったかのような写実的で美しい世界観は、高い評価を得ている。

山田義明氏が自ら講師を務める、写生をもとに絵付けを施す実習の授業の様子。

 


こちらは北村和義氏の作品。北村氏は、数々の有名ブランドとのコラボ作品を手がけたことも。北村和義氏は、青粒や赤地金彩の技法の授業を担当。

 

本科1年のロクロ成形の授業を担当するのは、竹内靖氏。竹内靖氏は、ご夫婦で「萌窯」を開いている。授業では、研修生の目の前で、ロクロの技術を披露することも。

 

こちらは、今では希少とされる型打ち成形技法で作られた器。この技法を継承するのが宮内庁御用達窯の山本篤氏。

 


研究科では、この希少な型打ち成形技法を山本篤氏から直接、学ぶことができる。

他にも九谷焼の世界で活躍する陶芸家の先生方が揃っています。研修生の中には卒業後、研修所で出会った先生の工房に就職する人もいます。

卒業後の活躍の場


令和元年度本科卒業後、青窯に就職した岡崎さん。研修生のころに青窯を見学。青窯の商品が好きはもちろん、形から絵付けまで商品アイデアを提案できる社風に魅力を感じ就職を希望。そして見事採用され、職人としての日々を送っている。

研修生の多くは、卒業後、九谷焼に関わる仕事をしています。卒業してすぐ独立する人もいれば、師事する陶芸家の工房や窯元で就職する人もいます。就職を経て独立する人には、石川県立九谷焼技術者自立支援工房があり独立をサポート。また工房兼住宅用の物件を能美市が紹介してくれる体制も整っているそう。



充実したカリキュラム、一流の講師陣。そして「好きな九谷焼」を仕事にできる魅力。入学して、九谷焼を学びたくなりました。

石川県立九谷焼技術研修所HP

石川県立九谷焼技術者自立支援工房HP